夕方会社のトイレで小をしてたら窓の向こうから、トラックのエンジン音が聞こえてきた。
お、いつもの運送のおっちゃんかなと思ってトイレの窓を開けたら、やっぱりいつものおっちゃんだった。
おっちゃんは窓から覗いてる僕に気付き、笑顔で手を振ってきた。
その後、作業場でおっちゃんは僕の顔を見るなり笑顔を浮かべ、荷物積みながら話かけてきた。
「自分、トイレの窓から顔出してる姿めっちゃ似おーてたで。
なんとも言えんいい感じやったで。
だから、俺めっちゃ笑顔やったやろ?」
「またそれですか。
それ前にも言ってましたよ」
「え、俺前にもそんなんゆーてたかな?」
「間違い無く言ってましたよ」
「そうか、ならよっぽど似おーとるっちゅーことやな。
ものすご、似おーてたで。なんかカッコエかったもんなー。
あそこの白い壁の色と自分のやな…」
「もういいです。わかりました、わかりました」
「自分、あれでギター首から吊り下げてたらもう言うことなしや。
明日自分、ギター持ってきーや」
「そんなん嫌ですよ。絶対に持って来ませんよ」
「なんでー、絶対カッコエーって。
俺ちゃんと手ー振るし。
もうなんか、あのトイレの窓からこー覗いてる自分の屈折のない笑顔忘れられんわ。
ほんじゃ明日ギター絶対持って来てな。楽しみにしてるな」
「絶対持って来ませんよ」
そして、おっちゃんは作業を終えて帰り際また言ってきた。
「よーしオッケー、忘れ物ないな。
ほんじゃ明日ギター首からぶら下げてトイレの窓からこっち見とってな。
楽しみにしてるで。ほな、お疲れー」
「絶対嫌ですよ、お疲れ様でしたー」
そして、おっちゃんはタッタッタッタッターっと帰っていった。
それからしばらく経った(5分程経った)後、タッタッタッタッターっと凄い勢いでおっちゃんが戻って来た。
「どーしたんですか。忘れ物ですか」
「ハァ、ハァ。さっき俺『屈折』って言って無かった?」
「あー、そいやーなんか、そー言ってましたねー」
するとおっちゃんは恥ずかしそうに少し笑いを浮かべ、おばちゃんとかがよくする『あらやだー』みたいな手の仕草をして、
「あれ間違いや、『屈託』の間違いや」
「え、わざわざそんなこと言いに戻って来たんですか」
「俺そんなん気になんねん。ほんじゃ、お疲れー」
と言ってまた、タッタッタッタッターと帰って行った。